当院はむし歯の徹底除去を心がけております。
お口の中にはたくさんの細菌が存在します。歯の表面に糖が付着すると、細菌は増殖し酸が産生されます。むし歯とは、この酸により歯が溶けてしまうこと(脱灰)です。むし歯はその大きさにより4種類に分けられます。
C1 |
C2 |
C3 |
C4 |
C1:歯の表面のむし歯 C2:歯の内部まで進行しているむし歯
C3:歯の神経まで達しているむし歯 C4:抜歯の必要性が高いむし歯
むし歯の要因になるものは3つあります。
(1)歯の硬さ(歯のむし歯に対する抵抗力)
(2)歯に付着する食物(細菌の繁殖のしやすさ)
(3)歯周囲の細菌の種類・数(むし歯を誘発する菌の量)
それら3つの複合でむし歯は発生・進行します。それぞれに対応があり、
(1)フッ素の塗布
(2)・(3)上手な歯磨き・洗口液の使用などが挙げられます。
常に言われていることではありますが、むし歯のケアの中で最も重要なのは日々の歯磨きと思われます。歯ブラシで磨きにくい部分、(1)歯と歯の間、(2)歯と歯茎の境、(3)歯の噛む面の溝などにむし歯は好発します。
C1・C2のむし歯の場合、むし歯の部分を削って詰めます。
歯の神経までむし歯が達している場合(C3)、歯の根の治療となります。根の治療後は歯にかぶせものをすることになります。むし歯により歯が崩壊している場合(C4)は、残念ながら歯を抜くこととなります。歯を抜いた後は、義歯・ブリッジ・インプラントなどを考えます。
皆さんは、むし歯の治療時に、
「レントゲンでは見えるけど、この歯のどこにむし歯があるんだろう?」
「むし歯を除去したところ、穴が予想以上に大きかった。」
などの経験はありませんか?
むし歯の細菌は歯の表層(エナメル質)から侵入し、内部(象牙質)に達します。この2つは、むし歯に対する抵抗力(硬さ)が異なるため、むし歯は歯の内部で容易に広がります。
乳歯や幼若永久歯の歯質は成熟していない(石灰化度が低い)ため、むし歯はさらに早く進行してしまうこともあります。年齢を問わず、ぜひ半年に一度検診を受けましょう。
皆さんは、歯の黒色や茶色い部分がむし歯と思っていませんか?実は、着色があっても健全であったり、白く見えてもむし歯だったりします。そこで用いられるのが、う蝕検知液です。
この液体は、むし歯のみを赤く染め出します。当院ではこれを用い、赤い色を目標にしてむし歯を除去することにより、歯の健全な部分を極力削らず、むし歯を除去していきます。
(1)大まかにむし歯を除去したところ
(2)赤く染めているところ
(3)水洗したところ
(赤い部分がむし歯です)
(4)赤い色を頼りにむし歯を
取り除きます
(5)きれいになりました
(6)詰め終わりです
目には見えない部分ですが、丁寧かつ精巧な技術を要する、大事な治療の一つです。
「歯の根の治療」はどのようなイメージがありますか?「歯の治療=削って詰める」という印象が強いため(右図1)、「根の治療」の具体的な内容は、あまりイメージがわかないというのが現状ではないかと思います。
歯の根の治療が必要になる症例は2種類あり、治療前の歯の状態により分類されます(下図2・3)。どちらもむし歯が大きく進行し、もともと歯の神経のあった部分まで細菌が侵入することにより治療が必要となります。
(図2)
むし歯が進行し、お口の中の細菌等が神経まで到達した症例です。歯髄(歯の神経・血管)は細菌感染し、管も汚染されます。特徴的な症状として冷たいものがしみる・熱いものがしみる・持続性の痛み・夜中に痛いなどが挙げられます。一方で、症状がなく進行している場合があり、レントゲンを撮ることにより発見されることもあります。
このような場合、まずむし歯の部分を除去し、その後根の中を消毒していきます。
(図3)
以前、歯の根の治療を受けた歯が、再度大きくむし歯になった症例です。詰め物と歯との境からむし歯になり、細菌が侵入し、根の内部や詰め物を汚染します。特徴的な症状として、咬んだ時の痛み、強い違和感、粘膜部の圧痛などが挙げられます。症状が重い場合、粘膜が大きく腫れたり、激痛を伴います。一方で、症状が無い場合でも、レントゲンを撮ることにより、骨の破壊が見つかることもあります。
このような場合、詰め物をはずし、根の中の消毒が必要になります。
ゴムのシート |
治療する歯 |
当院では、根の治療時にラバーダム(ゴムのシート)を用いております。
唾液中にはたくさんの細菌がいます。
根の中の治療中に唾液が入ってしまっては、なかなかきれいに消毒できません。そのため、治療する歯にレインコートをかけるようなイメージでゴムのシートをつけて治療します。
ゴムのシートをつけることでしっかり消毒できるだけでなく、使用する薬液がお口の中へもれにくくします
(ゴムのアレルギーのある方は事前にお知らせ下さい。他の材質のものを用います。)
歯の根の管(根管)はとても小さく、複雑な構造をしており、肉眼では確認しづらいことがあります。
脳外科や眼科等では細かな処置を行う際に、手術用実体顕微鏡が用いられています。
根の治療も目で見えない手探りの治療でしたが、手術用実体顕微鏡を用いることにより、より細かな部分まで確認できるようになりました。
当院では、この手術用実体顕微鏡を導入しており、根の治療や歯の状況確認等を行っております。
歯周病とは、プラーク(食べものの磨き残し・ばい菌など)により歯を支えている歯茎(歯肉)・骨が破壊される病気です。初期段階ではほとんど自覚症状がありません(ブラッシング時の出血程度)。そのため、症状を感じた時は歯周病が進行している事もあります。
では、歯周病はどのように進行していくのでしょうか?
プラークコントロールが良好な場合、歯肉は健康に保たれます(図1)が、プラークが左上図の緑の部分に多くなると歯肉は腫れ、出血を起こしやすくなります(図2)。
この状態が長く続いてしまうと、プラークは歯石になり歯周ポケットは深くなります。するとプラークは、より歯周ポケットの深い部分に入りこむため(左上図青い部分)、歯肉の炎症は増し、歯周ポケットから膿みが出たり歯を支える骨が減少し、歯が揺れ始めたりしてくるのです。
歯周病の治療はとてもシンプルです。歯周病の原因となるプラークを取り除くこと(プラークコントロール)が治療のメインになります。
歯科医院で歯石を除去し、ご自宅で上手に歯磨きをすることにより歯肉の腫れ・出血を抑え、歯を支えている歯肉・骨の破壊をストップすることができるのです。歯周病の治療は歯を削ってつめものをするむし歯の治療や歯型を採って入れ歯を入れる治療とは全く異なり、自然治癒力を応用するため期間がかかります。進行の程度にもよりますが、期間が開いても問題ありません。定期的に根気よく通院し、お口の中を清潔に保つことが重要です。
※診査:歯周ポケットの測定など
TVのCM等で、歯周ポケットという言葉を一度は耳にされたことがあると思います。歯周ポケットとは歯と歯茎の境にある溝の深さです。歯茎の検査(歯周病の検査)では、歯周ポケットと呼ばれる場所の深さを測定します。それでは実際に歯周ポケットとは、どの場所でどのように測定するのでしょうか?
測定にはポケット探針と呼ばれている、目盛のついている器具を用います(右図)。
器具の先端は丸くなっており、歯茎を傷つけない構造になっています。
この部分に器具を挿入し、歯茎の引き締まり具合(深さ)や歯石の沈着状況、また器具挿入時の出血の有無を検査します。これらの他に歯の動揺度も測定し、併せて歯茎の検査としています。
歯周病の状態・ポケットの深さ・原因等は、人によりそれぞれ異なります。歯科医師、歯科衛生士が、歯周病の検査の結果や歯周病の進行状態を説明していきます。疑問、質問等がございましたら、お気軽にお尋ねください。
むし歯になってから・歯周病になってから治療に来られる方がほとんどです。歯を治療するということの多くは、歯を削るということです。しかし、歯が悪くなってから来て頂いても治療することしかできないのです。
歯は削って治療するものではなく、削らないで予防していくことが大切です。歯は他の体の組織と異なり、自分で良くなる能力がないのです。自分の天然の歯以上のものはないのです。つめ物やかぶせ物は自分の歯以上には決して良くならないものです。
「毎日ちゃんと歯を磨いているのに」「時間をかけてしっかり歯を磨いているのに」それなのに何故むし歯になってしまうのでしょうか?実は、毎日の歯磨きを行っていても歯垢は取りきれるものではないのです。
歯科医院行う定期検診が大切です。
当院では治療が終了した患者様に、必要に応じて「定期検診お知らせ」のハガキを送付しています。
歯科における定期検診では、
- 歯周病の管理(定期的なクリーニング)
- むし歯の早期発見・早期治療(小さな初期むし歯の場合は経過観察)
- 義歯のチェック(噛み合わせ・適合)
を大切に行っております。
近年、歯科における定期検診という言葉は認知されつつありますが、その必要性についてはまだあまり知られていないのが現状です。
歯周病の原因は歯の周囲の汚れ(プラーク)です。プラークには2種類あります。
- (1)歯茎より上にあるもの(歯ブラシ等で除去する部分)
- (2)歯茎より下にあるもの(歯科医院で除去する部分)
(1)の部分は、ご自宅で清掃できるものの、(2)の部分はご自宅ではできません。この部分を定期的にクリーニングすることでむし歯・歯周病のリスクを軽減します。
小さいむし歯はほとんど症状がありません。そのため、歯がしみる等の症状が出た場合、むし歯は中程度以上に進行していることが多くみられます。むし歯を小さいうちに発見し治療する事は、
- 歯の削る量を少なくする
- 治療期間が短くてすむ
などのメリットがあります(小さいむし歯は経過観察を行うなど状況により方針は異なります)。
口の中に装着されたかぶせ物や義歯が永久に使えることはほとんどありません。人のお口の中は状況に応じて変化するからです。そのため、その時に応じた調整などが必要になります。
定期検診の間隔は、患者様ひとりひとりのお口の中の状況により異なります。一的般には半年〜1年と言われていますが、歯周病やむし歯のリスクの高い患者様についてはそれ以前に行うことをおすすめします。